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早期治療のすすめ

「自分は大丈夫」と思いがちな本疾患ですが、早期発見・治療が非常に重要です。

早期治療のすすめ

AUD(アルコール使用症/アルコール使用障害)は「やめようと思えばいつでもやめられる」「依存症なんて大げさだ」などと考え、患者さん本人が自覚しにくいことが少なくありません。そのため、症状が中等度〜重度に進行してから家族に連れられて受診するケースが多く見られます。

また、自分の意志でお酒を飲む量をコントロールできないなど、本来治療が必要と思われる方でも実際の受診率は低い1)ということが明らかになっています。AUD(アルコール使用症/アルコール使用障害)は進行性の疾患ですので、受診する以前から何らかの予兆があったと思われます。しかし、「病院にいく=生活に支障をきたすほどの重度の依存状態になっている」という誤った先入観を持っていると、軽症段階での治療機会を逃してしまうことが多いのです。

軽症の段階であれば、これまで基本とされてきたお酒を辞める「断酒」治療だけでなく、「お酒の量を減らす」ことや「問題のない飲み方をする」ことも含め、お酒との付き合い方を見直す「減酒」治療によっても、症状や問題の進行を防げる可能性があります。

一方で、重症の状態から回復し、安定した生活を送るには長い時間がかかることが多く、アルコールは、がんをはじめとする深刻な身体への影響を引き起こすこともあります。早期に治療を受けることができれば、健康へのダメージも最小限に抑えることができます。

家族や周囲の方からお酒を飲む習慣について心配されることも、疾患の可能性を示すサインです。ご本人はもちろんのこと、ご家族や大切な方のお酒の飲み方について少しでも「ん?」と思うことがあれば、なるべく早めに病院など医療機関を受診し、適切な治療について相談することが大切です。

1)Osaki Y, Kinjo A, Higuchi S, Matsumoto H,Yuzuriha T, Horie Y,et al.Prevalence and Trends in Alcohol Dependence and Alcohol Use Disorders in Japanese Adults; Results from Periodical Nationwide Surveys. Alcohol Alcohol. 2016 Jul;51(4):465-73.

監修者プロフィール

湯本 洋介先生(独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター精神科)

精神保健指定医、精神科専門医・指導医。2006年福井大学医学部医学科卒業。東京都立松沢病院にて精神科専門研修を修了。松沢病院に勤務時より、依存症医療に携わる。2014年より、独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターでアルコール依存症を中心に診療に従事。2017年に開設された減酒外来も担当している。