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医療機関での治療

「お酒の量を減らしたいけど減らせない」「最近お酒の量が増えてきたな」など少しでも不安に思ったら…早速行動に移しましょう。

治療の流れ

医療機関を予約する前に、治療の全体像を確認してみましょう。

まずはチェック

まずは、アルコール使用障害スクリーニングテスト (AUDIT)を用いてご自身の状況を確認してみましょう。

AUDチェックシート(AUDIT)

また、以下のチェックツールでは、具体的にどうすればよいかも結果と一緒に表示されます。
気になる方は、合わせて確認してみましょう。

飲酒チェックツール「SNAPPY-CAT」

医療機関を探す・予約

結果が分かったら、アルコールのお悩みを相談できる近くの医療機関を探してみましょう。
通いやすい医療機関が見つかったら、ぜひ予約してみましょう。

病院を探す

問診票の記入・診察

医療機関では、AUDITなどのスクリーニングテストのほか、お酒を飲むことによってどのような問題が起きているか、またその問題に対して患者さんはどう捉えているかなど、お話しを伺います。あわせて、ご家族のお話しを伺うこともあります。診察は主に医師との対話を中心に進みますが、患者さんの症状によっては血液検査、画像検査などを行うこともあります。


【初診でよく聞かれること】

  • どうして医療機関にかかろうと思ったか
  • お酒を飲むことによってどのような問題が起きているか(身体の症状、精神的な症状、家族関係、交友関係、仕事や会社への影響など)
  • その問題に対する患者さんの捉え方
  • 過去一年間のお酒の飲み方の状況
  • 生活歴(食事や睡眠の状況)および飲酒歴
  • 現病歴、既往歴 など

診断

日本の医療機関では、診断基準としてICD-10(国際疾病分類 ICDの第10版)やアメリカ精神医学会のDSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル 第5版)に基づいて診断を行います。患者さんの中には、ご自身のお酒の飲み方に問題があると十分に認識されていないケースも少なくありません。しかし、詳細な問診や診察を通じて、アルコールが健康や生活に与えている影響が明らかになり、診断に至ることもあります。

治療方針の決定

医師の判断と患者さんの意向を考慮したうえで、お酒を飲まない断酒治療、もしくはお酒を減らす減酒治療を選択します。

日々の生活

治療方針に基づいた日々の生活がなによりも重要です。

定期受診

安定した生活が送れるようになっても、医師の指示に従って定期的な受診が必要です。
お酒を減らす減酒治療では、飲酒量低減治療マニュアル1)に基づき、治療開始から12か月時点で治療が順調に進んでいると判断された場合、その後6か月の経過観察を行います。
お酒をやめる断酒治療の場合も、断酒が成功したと思っても再び元のお酒の飲み方に戻ってしまうケースも多いため、少なくとも減酒目標と同等以上の治療継続が必要となります。
治療は、個々人のペースに合わせて進められます。諦めずに、医師とともに一歩ずつ着実に治療を継続していくことが、より良い未来を築くための鍵となります。定期的な受診を心がけましょう。

1)飲酒量低減治療マニュアル ポケット版【第1版】2019年11月を2025年6月26日に参照

主な治療法

減酒治療

減酒とは、現在飲んでいるお酒の量や頻度を減らすことです。減酒治療では、毎日どれくらいお酒を飲んでいるかを客観的に振り返ることが重要になります。そのために、お酒を飲んだ量や頻度を記録する「飲酒日記」や、減酒治療補助アプリなどを活用し、日々の記録をつけるようにしましょう。以下のいずれかの基準を3か月間維持した場合を飲酒量低減(減酒)達成の目安とします2)

  • 飲酒量が、男性では平均純アルコール量40g /日以下、女性では純アルコール量20g /日以下
    または、
  • 飲酒量が低下し、飲酒に関連した健康問題、社会問題に顕著な改善が認められる

2)新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン,新興医学出版社,第一版より
※純アルコール量(g)=摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(アルコールの比重)

断酒治療

断酒とは、お酒を絶った生活習慣を維持することを指します。一時的に減酒治療を選択した場合でも、症状や状況によっては、最終的に断酒を目指すことが必要になる場合もあります。また、症状が重い場合には、専門の医療機関を受診したり、入院による治療が必要になることもあります。

治療にかかる費用

通院治療・入院治療のどちらにも健康保険が適用されます。自己負担が3割の方の場合、初診では約3,000円前後3)の費用がかかります。

費用の内訳(例)

  • 初診料
  • 通院精神療法
  • 血液検査
  • お薬の処方(必要な場合)

実際の費用は、各医療機関や受ける検査・処置の内容、処方薬の有無などによって異なります。保険適用外の自由診療として診断や治療を行っている医療機関もあるため、詳細は各医療機関へご確認ください。

3)今日の臨床サポート|診療報酬点数を2025年7月15日参照

自立支援医療(精神通院医療)制度とは?

自立支援医療(精神通院医療)制度は、精神医療のため定期的な通院が必要になる方に対し、医療費の自己負担を国がサポートする制度です。健康保険の適用で3割負担のところが、1割に軽減されます。また、この1割が大きな負担とならないよう、世帯の所得に応じて、1か月あたりの自己負担額には上限を設けています。症状は落ち着いていても、再発予防のために通院が続いている場合も、支援の対象となる可能性があります。詳細は受診された際に医療機関や、お住まいの市町村の担当課もしくは精神保健福祉センターにお問い合わせください。

主な自助グループ

お酒の飲み方に問題を感じている人々が集まり、お互いの体験を話したり聞いたりすることや、助け合える場所があると安心できます。
こうした集まりのことを「自助グループ」といいます。
自助グループは同じような経験を持つ人たちが、自ら運営している集まりで、病院や治療機関ではありません。そのため、医療機関での治療とあわせて参加することができます。自助グループにはいくつか種類がありますので、気軽に参加してみて、ご自身に合った場所を選ばれるといいでしょう。

主な自助グループ

グループ名 公益社団法人 全日本断酒連盟 Alcoholic Anonymous®
WEBサイト https://www.dansyu-renmei.or.jp/ https://aajapan.org/
参加方法 本名で行う 匿名性を重視
費用など 会費制 メンバーの状況に応じた献金制度
その他 原則として本人、家族、医療関係者も参加できる。 【クローズドミーティング】
本人のみの参加
【オープンミーティング】
家族やそれ以外の人も参加できる

※この表は画面幅が不足した場合横スクロールで閲覧できます

監修者プロフィール

湯本 洋介先生(独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター精神科)

精神保健指定医、精神科専門医・指導医。2006年福井大学医学部医学科卒業。東京都立松沢病院にて精神科専門研修を修了。松沢病院に勤務時より、依存症医療に携わる。2014年より、独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターでアルコール依存症を中心に診療に従事。2017年に開設された減酒外来も担当している。