減酒治療補助アプリ「HAUDY(ハウディ)」の臨床成績についてご紹介します。
国内多施設共同無作為化比較試験 ALM-003
社内資料(承認時評価資料):CureApp AUD 飲酒量低減治療補助アプリ
使用上の注意等は電子添文をご参照ください。
試験デザイン
目的
アルコール依存症患者を対象に、飲酒量低減治療マニュアルに記載された手順に従った心理社会的治療※1に加えて本品を使用する介入群と、飲酒量低減指導に加えて本品から有効と考える機能を取り除き飲酒記録機能のみを使用する対照群の二群において、12週時点での有効性の優越性の検証及び安全性を比較検討する。
※1 疾病教育、目標設定、セルフモニタリングの支援とフィードバック等。より専門的なものには認知行動療法や動機づけ面接法等がある。
対象
飲酒量低減治療が選択可能な患者として、以下の基準を全て満たすアルコール依存症患者を対象とした。
- 同意取得時において年齢が20歳以上の人
- ICD-10(WHOが定めた国際疾病分類 第10版)の診断基準を用いてアルコール依存症と診断された人
- -4週から0週前日までの期間のDrinking Risk Level(以下DRL)※2がHigh、又はVery Highの人
- 飲酒によって社会・家庭生活に重篤な困難が生じていない人
- 飲酒によって生命に危機があるような重篤な臓器障害が生じていない人 等
※2 WHOによる健康リスクに基づく飲酒量のリスク分類。High又はVery Highは、1日平均のアルコール摂取量が男性の場合60.0g、女性の場合40.0gを超える。
方法
非盲検ランダム化比較試験をアルコール依存症に関する研修を受けた医師・医療機関(17施設)で実施した。

評価項目
主要評価項目(検証的な解析項目)
HDD数のベースラインから12週時点への変化量
主な副次評価項目(検証的な解析項目)
- Total Alcohol Consumption(以下TAC)のベースラインから12週時点、24週時点への変化量
- 12週時点及び24週時点における以下の項目
Response Low Drinking Risk Level(以下RLDRL):DRLがLow以下となった症例
HDD数の有効率:HDD数が4日以下となった患者割合 等
安全性評価項目
有害事象及び本アプリの不具合
解析計画
有効性解析対象集団はFAS(Full Analysis Set)とした。安全性解析対象集団は、本試験に登録され、試験治療を少なくとも1度以上実施した全ての症例とした。固定効果として、時点、群、時点と群の交互作用、変量効果として、被験者個人、共変量として、性別、年齢、ベースライン時のHDD数及びTACを指定したMMRMによる解析を実施した。検定の有意水準は両側5%を達成した場合に、優越性が検証されたとした。また、RLDRL割合においては、性別、ベースラインのDRLを調整したCochran-Mantel-Haenszel検定を実施した。
有効性
HDD数のベースラインから12週時点への変化量
主要評価項目(検証的解析結果)※3
HDD数のベースラインから12週時点への変化量(調整済み平均値±標準誤差)は介入群で-12.237±0.698日/4週、対照群で-9.453±0.678日/4週、群間の調整済み平均値の差は-2.785日/4週(95%信頼区間 -4.666日/4週 to -0.904日/4週)であり、介入群は対照群に対して有意な減少を示し(p=0.0038)、本品の優越性が確認された。

TACのベースラインから12週時点への変化量
副次評価項目(検証的解析結果)※3
TACのベースラインから12週時点への変化量(調整済み平均値±標準誤差)は介入群で-39.399±1.904g/日、対照群で-33.304±1.848g/日、群間の調整済み平均値の差は-6.095g/日(95%信頼区間 -11.209g/日 to -0.982g/日)であり有意差が認められた(p=0.0196)。
※3 固定効果として、時点、群、時点と群の交互作用、変量効果として、被験者個人、共変量として、性別、年齢、ベースライン時のHDD数及びTACを指定したMMRMによる解析を実施。検定の有意水準は両側5%とした。

12週時点でのRLDRL割合
副次評価項目(検証的解析結果)※4
12週時点におけるRLDRL割合については介入群で29.3%、対照群で15.9%、オッズ比(95%信頼区間下限~上限)は2.23(1.20~4.13)であり有意差が認められた(p=0.0099)。
※4 性別、ベースラインのDRLを調整したCochran-Mantel-Haenszel検定を実施。

安全性
介入群と対照群において、各アプリと因果関係のある有害事象の発現はありませんでした。
また、健康被害発生のおそれがある不具合の発現は、両群ともにありませんでした。
用語解説
- HDD(Heavy Drinking Day、多量飲酒日)数
- 1日の純アルコール摂取量が男性60.0g、女性40.0gを超える日の4週間あたりの日数であり、European Medicines Agencyにおいても用いられているアルコール依存症に対する治療法の有効性を評価する指標です。算出方法は以下の式を用いています。
{前回来院日から当該来院日前日までの期間におけるHDDの総和÷(前回来院日から当該来院日前日までの日数-欠測日数)}×28
HDD数が2日減少すると死亡率のハザード比が0.05減少するという研究結果があります。 - Plunk, A. D. e t al., Alcohol Clin Exp Res., 2014; 38(2), 471‒478.
- TAC(Total Alcohol Consumption、総アルコール摂取量平均)
- 飲酒習慣全体の傾向を把握する目的で用いられる指標であり、本試験では、前回来院日から当該来院日前日までの期間における1日あたりの純アルコール摂取量の平均値(g /日)と定義しています。
- RLDRL(Response Low Drinking Risk Level)割合
- 1日平均のアルコール摂取量がリスク分類上、LOW(男性40.0g/日以下、女性20.0g/日以下)に低減した患者割合です。飲酒量低減の目安は、DRLがLOW以下の状態(RLDRL)を3か月間維持することとされています。
- 樋口進, 他(編), 「新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン」, 新興医学出版社, 2018.
2025年7月作成