精神科クリニックにおけるHAUDY(ハウディ)導入と
アルコール依存症治療の実践
池袋オリーブメンタルクリニック
院長 松島 幸恵 先生
精神科専門医・MBSR(マインドフルネスストレス低減法)認定講師
(取材日:2026年2月2日、取材場所:池袋オリーブメンタルクリニック)
アルコール依存症の患者さんはどのくらいらっしゃいますか?
アルコール使用症/アルコール使用障害(AUD)の疾患啓発CMやYouTube番組などをご覧になって受診される方が増加傾向にあり、当クリニックでは、新患の約半数がAUDの患者さんです。
また、患者さんが勤務されている企業によってはアルコールチェックが義務化されているケースもあり、アルコール多飲者に対しての社会の目が厳しくなってきたことも、受診増加の一因になっているのかもしれません。
以前は、ご家族の強い勧めにより付き添われて受診というケースが多くみられましたが、今は患者さんご自身で自覚され来院されるケースがほとんどで、皆さまの意識も大きく変わってきたと感じています。
従来のアルコール依存症の治療法はどのようなものでしたか?
軽症の患者さんに対しては、患者指導箋を用いた心理社会的治療や薬物治療を中心に行なっていました。
一方で、重症の患者さんについては、入院施設やデイケアを併設する専門医療機関に紹介せざるを得ない状況でした。
HAUDY(ハウディ)を導入したきっかけを教えてください。
アルコール依存症の治療において、従来の治療法では一定の限界があると感じていました。当クリニックではデイケアを併設していないため、補助的な心理教育の実施が困難です。また、患者さんもフルタイムで仕事している方や経営者の方が多いので、時間的に余裕がなく、断酒会や AA(アルコホーリクス・アノニマス)に参加できないといった方がほとんどでした。
HAUDY(ハウディ)を導入すれば、オリジナルキャラクターの「ナンシー」が心理教育やマインドフルネス※1などを教えてくれ、アプリが患者さんと医師の架け橋となることで連携した治療が行えます。その上、医師の時間的な負担も少ないことが、導入に踏み切ったきっかけです。
※1:意図的に、今この瞬間に、評価や判断をせずに注意を向けること

HAUDY(ハウディ)が適するのはどのような患者さんですか?
現役で就労している方、もしくは過去に就労経験があり、比較的規則正しい生活が送れている方が適していると思います。加えて、アプリを使うことに抵抗感がなく、かつ治療意欲が高い方に向くと思います。なかでも最大のポイントは、「治療意欲が高い方」です。主体的に治療へ取り組もうとする意欲がある方ほど、アプリを活用した治療の効果を引き出せると感じています。
患者さんにHAUDY(ハウディ)を紹介するタイミングや声かけはどのようにされていますか?
患者さんの約6割は、自らHAUDY(ハウディ)の使用を希望して来院されます。残りの4割は既存の患者さんで、減酒や断酒が思うように進んでいない方や、肝機能の数値などからもう少しケアの強化が必要だと判断される方に積極的にお勧めしています。アプリによる治療は、投薬に抵抗感がある患者さんにも勧めやすく、治療の選択肢が広がる点が一番のメリットです。「まずはアプリで6ヶ月取り組んでみて、十分な効果が得られなければ薬物治療という選択肢もあるので、検討してみてはいかがですか」とお伝えしています。
アルコール依存症の病態やHAUDY(ハウディ)に期待される治療効果、具体的な使用方法の説明には、沢井製薬が提供する冊子「減酒治療スタートブック」を使用しています。患者さんによっては、ブラックアウト※2があると、かなり進んだ状態だという認識がないケースも多いので、この冊子を用いて丁寧に説明しています。漫画形式で構成されているためとてもわかりやすく、患者指導に役立っています。
さらに、アプリの継続が難しい患者さんには、『とにかく続けること』の大切さをお伝えしています。
※2:飲酒時に一時的に記憶を失うこと


HAUDY(ハウディ)の使い勝手についてお伺いします。まずは、患者さんが「患者アプリ」を使用開始するまでのオペレーションを教えてください。
アプリの処方コードの発行は、私が行なっています。すぐ脇にプリンターがあるのですが、患者さんによっては印刷することなく、その場で二次元コードを読み取ってアプリをインストールして、処方コードを入力されることもあります。手間はほとんどかからないです。
当クリニックはWEB予約制を採用しているため、そういったことからも比較的ITリテラシーの高い患者さんが多いのかもしれません。アプリのインストールからHAUDY(ハウディ)の問診の入力が終わるまでの所要時間は平均10分くらいです。
導入当初はアプリのインストールや問診の入力に、看護師の補助が必要になるのではと思っていましたが、補助が必要な患者さんはいらっしゃいませんでした。
次に、「医師アプリ」の使い勝手について教えてください。
使いやすいです。HAUDY(ハウディ)を導⼊する以前は、持参していただいた飲酒記録をスキャンしたり、飲酒日などの割合を⼿計算したりと、時間と⼿間がかかっていました。
しかしHAUDY(ハウディ)を導入することで、休肝⽇が何⽇あるのか、飲酒量がどの程度かといった情報を、短時間で確認することができます。
そして、患者データの貼り付け機能により、カルテ記載の負担が軽減されています。
HAUDY(ハウディ)を使った患者さんの反応はいかがですか?
患者さんの反応は良好です。HAUDY(ハウディ)オリジナルキャラクターの「ナンシー」が患者さんの治療に寄り添い、「私、ナンシーがサポートします!」というフレーズが患者さんの心に響いているようです。アプリが単なる記録ツールにとどまらず、伴走者のような存在として受け止められているようです。
現在では、記録を紙媒体に記入するよりも、スマートフォンで完結させる人が多くなってきているので、その点からもHAUDY(ハウディ)は患者さんのニーズに合っているのだと思います。
また、精神科領域ではMeasurement Based Care(MBC)が重要だと⾔われており、⾃分の状態や症状の変遷を追い、医師と共有することが、症状改善に寄与すると考えられています。HAUDY(ハウディ)は、患者さんが⽇々の飲酒量やその時の気分状態などを継続的に記録することで、MBCに基づく治療を実践できるツールです。さらに、患者さんの⽇常の状態を医師と共有することが可能となり、よりきめ細やかな治療介⼊につながります。これらの積み重ねが、結果として患者さんご⾃⾝の治療への主体的な姿勢を育んでいるのではないかと考えます。
HAUDY(ハウディ)の導入を迷っている他の先生方にメッセージをお願いします。
クリニックとして導⼊して良かったと思っています。HAUDY(ハウディ)を導⼊する時は、多少の抵抗感がありましたが、実際に使ってみると操作は簡便かつ、治療に役立っています。HAUDY(ハウディ)の導⼊によって、アルコール依存症の治療で重要な⽇常⽣活の記録と⼼理教育が補完されるので、アルコール依存症を専⾨とするクリニックでなくても、より丁寧で、きめ細かな診療の実践が可能になるという印象を持っています。私たちのようなデイケアを併設していないクリニックにこそ、HAUDY(ハウディ)が有⽤だと思いますし、今後も多くの患者さんの治療に役立てたいと考えています。