内科診療におけるHAUDY(ハウディ)を用いた減酒治療の実践
医療法人社団 慶洋会 ケイアイクリニック
院長 堀江 義則 先生
日本アルコール・アディクション医学会 顧問
(取材日:2026年2月3日、取材場所:ケイアイクリニック)
アルコール依存症の患者さんはどのくらいらっしゃいますか?
軽症も含めると、年間60〜70人ほどのアルコール依存症患者さんを診ています。ただ、みなさん最初からアルコール依存症を治療する目的で当クリニックを受診されたわけではありません。健康診断をきっかけに来院されたり、高血圧など他の疾患治療のために通われているなかで血液検査の結果からアルコール依存症だったと判明するケースが多くあります。検査値により顕在化しない患者さんもおられるので、潜在層を含めると実態はさらに多いのではないかと思います。
アルコール依存症治療に対するHAUDY(ハウディ)導入時に、患者さんにはどのように声かけをされていますか。
治療開始のタイミングは人によって様々です。γ-GTPが高値であっても無症状な場合もあり、アルコール依存症と診断された患者さん全員が治療を希望されるわけではありません。
HAUDY(ハウディ)による治療につながらない患者さんもいますし、誰もがすぐに禁酒を宣言するというわけにはいかないと思います。飲酒量低減のためにはブリーフ・インターベンション(BI)が有効だといわれていますので、こちらから治療提案を押し付けることはできるだけしません。まずは、アルコール依存症改善の話題に関心を示した患者さんに対して「治療選択肢としてこんな方法もありますよ」と、HAUDY(ハウディ)などの治療法を紹介するようにしています。
また、肝機能や尿酸値が基準値を外れた場合などのタイミングで、HAUDY(ハウディ)を用いた治療を試してみないかと提案するようにしています。
患者さんがHAUDY(ハウディ)を利用開始するにあたってのフローは、どのようなものでしょうか。また、達成目標の設定はどのようにされていますか。
まず初診時に、当クリニックが発行した処方コード(二次元コード)を患者さんのスマートフォンで読み込んでいただき、アプリをインストールしてもらいます。多くの方がアプリの扱いに慣れていらっしゃるので、困っておられる場合は補助に入るようスタッフには指示していましたが、ほとんどの患者さんはご自身だけで作業を完了されています。
アプリをインストールしたのちに患者さんがアプリ上の問診に答えると、その回答内容が医師アプリの方にも共有されます。1日の飲酒量など事前の診察で患者さんから直接伺った話もありますが、アプリによる問診の結果でより詳細に把握することができますので、その情報に基づきながら、どのように減酒治療を進めていくかを患者さんと一緒に考えていきます。
減酒には、毎日の飲酒量を減らすパターンと休肝日を作るパターンと大きく分けて二通りありますが、どちらを選択するかは患者さんによって半々です。ポイントは、最初から高いゴールを目指すことはせず、患者さんの希望に沿って目標を設定することにあります。
クリニックでのHAUDY(ハウディ)導入後の診察状況についてお伺いします。HAUDY(ハウディ)を導入されて以降、診察時間の変化などはありましたか?
初診時には、アプリをインストールしたり問診に答えたりする作業が生じますので、患者さんのクリニックでの滞在時間そのものは長くなりますが、診察時間が延長されるということはありません。結果的に、診察時間は初診時から短縮されていると思います。再診以降は、HAUDY(ハウディ)の記録を患者さんと一緒に振り返りながら診察を進めていき、概ね5分程度で完了します。とくに、減酒の経過が順調に改善傾向にある患者さんはスムーズです。また、前回の診察から改善がみられない患者さんについては、現状に対するアドバイスとともに今後の目標設定を改めて行うこともありますが、両者ともに診察時間に関しての大きな差は生じないと感じています。


治療に取り組まれている患者さんからのHAUDY(ハウディ)に対する反応はいかがですか。
今日では、多くの人がスマートフォンを持っていて、電車の中などでも常に触れていることが習慣化しています。なので、アプリでの記録に抵抗感はなく、手軽に感じていらっしゃるようです。もちろん紙への記述式を好む方もおられるでしょうが、スマートフォンによるアプリ操作に馴れてらっしゃる方にとっては、好きなタイミングで記録できるスタイルがやはり便利なのかもしれません。反対に、スマートフォン操作に慣れていらっしゃらない患者さんは、アプリでの毎日の記録の習慣化は導入に困難を伴うのではないかと感じます。
また、飲酒記録がグラフで見える化されるところもHAUDY(ハウディ)の長所だと感じます。ダイエットでの体重の記録と同様に、毎日きちんと記録することで経時変化がグラフで表示されるので、患者さんの治療に対するモチベーション維持にもつながるのではないかと思っています。
患者さんのHAUDY(ハウディ)の利用継続率はいかがでしょうか。
現在当クリニックでHAUDY(ハウディ)を導入されている患者さんは、全員継続して利用されています。記録率も、たまに短期的な記録忘れがあるものの、利用離脱はありません。
一般的な傾向として、アルコール依存症の症状が強くなればなるほど、毎日記録することが困難な人が多くなり、精神的に「何かをやる」という行為自体を実践に移すことが難しい患者さんもいらっしゃいます。
HAUDY(ハウディ)を利用する際には、毎日アプリを開いて記録するという習慣づけが求められますが、忘れてしまったことに対して注意ばかりしたり、記入を強要したりしても本人の継続にはつながりません。「まずは一週間でいいから書いてみて」というように、到達しやすい目標を掲げて行動を促す声かけをしながら、患者さんに自主的に継続使用してもらえることが大切ですね。
一般の内科医の先生方に向けて、HAUDY(ハウディ)導入の経験から感じられたことをお聞かせいただけますか?
スマートフォンに慣れた患者さんにとっては、特に有用なツールだと感じています。アプリ導入当初は、患者さんによる入力の手間なども懸念していましたが、スマートフォンの日常的な使用が一般化していますので、アプリでの作業を選択される方も少なくないようです。そのような背景から、導入のハードルもそれほど高くなく、飲酒記録以外にもHAUDY(ハウディ)内でアプリのサポート機能による減酒指導が、医師のみなさんの診療の一助にもなるかと思います。
アルコール依存症患者さんは病態や生活背景が千差万別であり、治療においては個々の患者さんに応じた「褒める」「共感する」「エンパワーメントする」といったブリーフ・インターベンション(BI)が肝心です。したがって、医師もアプリを使うだけにとどまらず、患者さんの飲酒状況が改善した時はどのような点がよかったのか、うまくいった点は何だったのかを振り返っていただくことで、ブリーフ・インターベンション(BI)を含めたアルコール依存症治療のスキルアップにもつながると感じています。アプリを運用しながら、医療スタッフ側もぜひ一緒に学んでいくことができればいいですね。