精神科病院におけるHAUDY(ハウディ)を活用したアルコール外来の実践
医療法人財団厚生協会 東京足立病院
精神科 北村 昌之 先生
アルコール外来担当
医療法人財団厚生協会 東京足立病院
看護部 看護管理室 看護科長
古谷 真由美
先生
精神科認定看護師
(取材日:2026年3月4日、取材場所:東京足立病院)
アルコール依存症の患者さんはどのくらいらっしゃいますか?
北村先生年間約1,000名で、内訳は外来が約800名、入院が約200名です。
アルコール依存症の治療はどのようにされていますか?
北村先生入院治療では、急性期の離脱症状(禁断症状)や、合併している肝機能障害などの治療を行います。その後、ある程度、身体状態や精神状態が落ち着いてから、動機づけ面接、アルコールリハビリテーションプログラム(ARP)、再発予防教育、家族支援などを組み合わせた治療を行っています。 当院ではARPを3ヶ月で1クールとしており、その期間を目安に入院治療を進めています。
外来での治療は、患者さんの希望が多岐にわたるので、「減酒」を希望される方には、お酒を減らすための方法についての助言を行いながら、HAUDY(ハウディ)や薬物療法に加え生活指導も行っています。
一方、「断酒」を希望される場合には、断酒を継続できるよう、薬物療法や精神療法、動機づけ面接に加え、家族支援などを組み合わせて治療を行っています。
HAUDY(ハウディ)を導入した時期ときっかけを教えてください。
北村先生2025年10月に導入しました。HAUDY(ハウディ)はこれまでの治療とは異なる角度からアプローチできる点が良いのではと考え、積極的に導入を推進しました。患者さんにはさまざまな方がいらっしゃるので、治療のアプローチ方法に多数の選択肢があるのは良いことだと思っています。
HAUDY(ハウディ)の紹介を受けた際、第一印象としてデジタルツールに抵抗のない患者さんには特に有効ではないかと思いました。
HAUDY(ハウディ)導入時の問題点や導入にあたり工夫したことはございますか?
北村先生アプリの導入は初めての試みでしたので、新しい薬を処方する場合とは異なり、院内でどのように扱えばよいか分からず、まず運用方法を考えるところから始めました。
導入当初は、途中でうまく進まないこともあり、戸惑う場面もありましたが、何度か経験するうちにスムーズに進められるようになり、現在は問題なく運用できています。
古谷先生誰がHAUDY(ハウディ)の説明を患者さんに行うのか、また、HAUDY(ハウディ)使用中のサポート体制をどうするか、保険適用のため医事課での請求をどのように行うかなど、運用面での調整が必要でした。導入当初はそのあたりで少し慌ただしい部分もありましたが、その都度担当MRの説明を受けながら進めていくことで、スムーズに運用できるようになりました。
HAUDY(ハウディ)が適するのはどのような患者さんですか?
北村先生スマートフォンでアプリを使う治療である以上、患者さん自身がデジタルツールに慣れていることが条件になると思います。必ずしも若い方に使用が限定されるわけではなく、70歳の患者さんでもスマートフォンを使いこなされている方にはHAUDY(ハウディ)を導入しています。
あくまで一般論ですが、好奇心が強く、新しいものを試してみたいという意欲が旺盛な方にも向いていると思います。「治療に役立つツールがあるなら使ってみたい」と前向きに取り組んでくださる方は、HAUDY(ハウディ)の活用もうまくいきやすい印象があります。
さらに、減酒に向けて努力しているものの「どうして自分が飲んでしまうのかわからない」と感じている患者さんにもHAUDY(ハウディ)は有用ではないかと思っています。具体的な数字を入力したり、日々の状況を記録したりすることで、「こういう時に飲んでしまうのだ」と、自分自身の行動を振り返る"気づき"が生まれることが良い結果を生むのでしょうね。
患者さんにHAUDY(ハウディ)を紹介するタイミングや声かけはどのようにされていますか?
北村先生外来患者さんでは、減酒を希望される方も多くいらっしゃるので、初診の際に、HAUDY(ハウディ)を提案しています。費用なども説明した上で希望される場合は、その場でスタッフと連携して導入しています。
迷われている方には詳細をご説明のうえ、ご自宅でゆっくり検討いただいて、次回来院時に改めてご意向を確認した上で、ご希望であれば導入を進めています。
また、当院には治療目標が「断酒」、「減酒」など異なる患者さんが入院されています。入院の患者さんについても、退院にあたって希望される方には、HAUDY(ハウディ)の活用方法を紹介しています。導入にあたっては、外来の主治医と相談しながら進めています。

HAUDY(ハウディ)処方・診察時のオペレーションフローを教えてください。
北村先生減酒を希望される患者さんには、主治医がHAUDY(ハウディ)を紹介しています。やってみたいという希望があれば、処方コードを発行し、その後は看護師にバトンタッチしています。
古谷先生主治医から指示を受けた後は、患者さんにアプリのインストール方法を説明し、問診の回答入力、治療目標の確認まで一緒に行います。その後、再度、主治医の診察を受けて治療目標等を確定してもらい、初回の診察が終了します。進め方は各主治医の指示に応じて柔軟に対応しています。
診察時に使用する「医師アプリ」の使い勝手はいかがですか?
北村先生アプリ自体の操作が比較的シンプルで使いやすいと感じています。目標値を設定する際には提案機能もあり、アルコール量の目安も表示されるため、短い外来診療時間の中でもスムーズに活用でき、助かっています。
HAUDY(ハウディ)を使った患者さんの反応はいかがですか?
北村先生入力が大変だという声はあります。なかには毎日記録するのが大変なので、まとめて入力する方も見受けられますが、多くの方はきちんと入力を続けてくれています。
また、お酒の量を入力することで具体的な飲酒量がわかり、それを見て「飲酒量を意識するようになった」という声もあります。目標を達成できた時には「嬉しい」と喜んでくれる方もいますし、「チェックしてくれていると思うと頑張れる」と笑顔で話してくれる方もいます。HAUDY(ハウディ)は、日々の入力を続けている方、努力されている方には好評ですし、医師として患者さんに伴走している実感を得ることができます。
HAUDY(ハウディ)での治療途中で離脱されたケースはありますか?
北村先生これまでに離脱されたケースはありません。
古谷先生離脱はありませんが、患者さんの入力状況は気になるので、週1回程度医師アプリを見て確認しています。患者さんの中には、アプリへの入力がほとんどできていない方もいらっしゃいます。思い立った時に、数日に一度、あるいは数週間に一度といったペースでしか入力できていないケースもあります。
そのような患者さんに「もう少し続けてみますか?」と尋ねてみると、意外にもはっきりと「はい」と答えてくださいます。もちろん、そのような利用状況では診察として扱うことはできず、保険算定も取れません※。それでも、もう少し続けてみようという意欲があり、時々であっても入力を続けてくれるのであれば、患者さんの前向きな姿勢を大切にして定期的な診察・指導のもと治療を継続しています。
また、アプリの使用が、患者さんの来院理由の一つになることもあります。「アプリのことを相談したい」と私たち看護師に声をかけてくださる機会も生まれており、こうしたコミュニケーションを通じて患者さんとの関係性の構築にもつながっていると感じています。
※HAUDY(ハウディ)の保険算定については、保険適用の詳細をご確認ください。
HAUDY(ハウディ)のアプリとしてのベネフィットはどのあたりにあると感じていますか?
北村先生一番は、飲酒状況が「見える化」される点だと思います。最近減ってきているとか、前回と比べて飲酒量を示すグラフの山が小さくなっているといった変化が、一目でわかります。そうした変化を患者さんと一緒に確認し情報共有できるのは、大きなメリットだと感じています。
また、患者さんの中には「この日はこういうことがあって飲みすぎてしまった」といったメモを残してくれる方もいます。それを患者さんと一緒に見ることで、「こういう場面だと飲みすぎてしまうのですね」といった形で、飲酒の背景を振り返ることができます。単に数字を見るだけでなく、当時の状況やきっかけを含めて話ができる点は、有用だと思います。
そして、アプリを使って患者さん自身が記録をつけながら治療に取り組むことが、患者さんの治療に向き合うモチベーションの維持・向上にもつながっていると感じています。