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AUD(アルコール使用症/アルコール使用障害)に関連する「治療」


監修:独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター 精神科医長
湯本洋介先生

新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン1)を中心とした治療解説

AUD(アルコール使用症/アルコール使用障害)の治療には、最新の「新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン」が適用されます。このガイドラインは、患者さん一人ひとりの状態に応じた適切な治療方針を提供するための指針となります。

治療目標

原則は継続した断酒が治療目標となります。
ただし、以下の「断酒を選択すべき患者」の基準に該当しない軽症のアルコール依存症患者さんもしくは、断酒目標が適当と思われる患者さんにおいても断酒への抵抗感が強く治療導入が困難な事例において、中間目標として飲酒量低減(以下「減酒」とする。)を選択することができます。理想的には男性では平均純アルコール量40g/日以下の飲酒、女性では20g/日以下の飲酒が減酒の目安2)になりますが、個々の患者さんの状態を基に判断する必要があります。

※純アルコール量(g)=摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(アルコールの比重)

断酒を選択すべき患者2)

  1. 入院による治療が必要な患者
  2. 飲酒に伴って生じる問題が重篤で社会・家庭生活が困難な患者
  3. 臓器障害が重篤で飲酒により生命に危機があるような患者
  4. 現在、緊急の治療を要するアルコール離脱症状(幻覚、けいれん、振戦せん妄など)のある患者
  5. 断酒を希望する患者

断酒を選択すべき状況にありながら、中間目標として減酒を選択した場合でも、受診時に身体症状や臨床検査値等を基に断酒の必要性について説明、断酒への移行や専門医療機関への紹介を促していく必要があります。アルコール依存症の診断、治療選択のフローチャートを(図1)に示します。

(図1)
アルコール依存症の診断、治療選択のフローチャート

※この画像は画面幅が不足した場合横スクロールで閲覧できます

新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン(第1版)p.18より作成

※1 一時的に飲酒量を減らすことができるが時間の経過とともにうまくいかなくなるケースも含む。
※2 飲酒量低減がうまくいったとしても、本来は断酒をしなければいけないケースであるため、断酒が望ましいことを伝え、断酒の同意を得る。

出典:新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドラインに基づいたアルコール依存症の診断治療の手引き【第1版】「2018年12月」(2025年7月閲覧)


治療内容

アルコール依存症の治療の主体は、断酒あるいは減酒のいずれにおいても、心理社会的治療です。 薬物治療は補助的な役割を担います。

減酒のための心理社会的治療

新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドラインでは、心理社会的治療として毎日の飲酒量のモニタリングが重要とされています。日常診療において飲酒日記を用いることで「目標設定」「飲酒量の確認」「服薬状況の確認」「改善評価」「目標の再評価」というサイクルで無理なく行うことができます。
その他の心理社会的治療にはより専門的な治療として認知行動療法、集団精神療法、動機付け面接法、家族療法などがあります。

減酒のための薬物治療

アルコール依存症の減酒のための薬物治療としてナルメフェンを考慮します。1)薬剤を用いた減酒の流れは(図2)の通りです。

(図2)
アルコール依存症に対する薬剤を用いた減酒の流れ

※この画像は画面幅が不足した場合横スクロールで閲覧できます

出典:飲酒量低減治療マニュアル ポケット版【第1版】「2019年11月」(2025年7月閲覧)

断酒のための治療

心理社会的治療としては飲酒量低減目標と同様に「認知行動療法」「動機付け面接法」といった医療機関で提供するものに加え、自助グループを活用した「集団精神療法」などがあります。入院治療を要する場合もあります。また、患者家族の回復を目指すことも重要とされています。
薬物療法としては飲酒欲求を抑えるアカンプロサートやアルコールの代謝酵素を阻害する抗酒剤のジスルフィラムやシアナミドがあります。1)

2025年7月作成


参考

  1. 樋口進, 他(編), 「新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン」, 新興医学出版社, 2018.
  2. 飲酒量低減治療マニュアル ポケット版【第1版】「2019年11月」(2025年7月閲覧)

さらに詳しく知りたい方へ

アプリの導入にあたって気になるポイントを解説します

HAUDY ハウディ の販売名は「CureApp AUD 飲酒量低減治療補助アプリ」です。

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