環境の変化や心身の不調を乗り越えながら、自分のペースで取り組む「減酒」の道のり

通院 / 40代 / 女性 / 本人

今回お話を伺ったのは、専門の資格を活かしたパート勤務をしながら在宅ワークも行うBさん(43歳/女性)。仕事のストレスや結婚後の人生の大きな転機をきっかけに、飲酒量が増加していきました。健康診断の数値をきっかけに、自らアルコール専門外来の門を叩いたBさん。環境の変化や心身の不調からくるストレスによって飲酒量が増減する葛藤を抱えながらも、医師のフォローを受けつつ、今もなお自分に合ったペースでお酒と向き合い続けるBさんのリアルなストーリーをご紹介します。

仕事のストレスと、人生の大きな転機から始まったお酒の習慣

――お酒を飲み始めた時期と、当時の状況について教えてください。

最初にお酒を口にしたのは大学生のときでした。当時はアルバイトをしていて、バイト仲間との飲み会など、みんなで楽しく飲むときだけお酒があればいいという程度だったんです。その後、新卒で製薬会社の営業職(MR)として就職したのですが、会社の人たちに誘われて毎日のように飲みに行くようになり、ここから毎日飲む習慣が徐々についてしまったように思います。

――お仕事の環境もお酒の習慣に影響したのですね。その後、さらに量が増えていったのはいつ頃からでしょうか?

自分の性格的に、営業職の仕事があまり向いていないと感じており、お酒を家にストックして、仕事のストレスを発散するために飲んでいました。その後、3年半で営業職を辞め、自分の資格を活かせる仕事へ転職しました。転職先では仕事の業務量や適性が自分に合っていると感じ、お酒も毎日は飲まない状態に一度落ち着いたんです。

――そこから再び飲酒量が増えることになったのは何がきっかけだったのですか?

今から10年くらい前に結婚したのですが、その数年後に、自分が思い描いていた将来のライフプランが叶わないことが発覚しました。その事実が分かったことに対するショックが非常に大きかったことを覚えています。そこから現実の辛さをまぎらわせるようにお酒の量が増えていって、気づけば家でも外でも関係なく、1日にアルコール分5%の缶チューハイ350mlなどを毎日7〜8本飲むようになってしまいました。

仕事に影響は出ないものの、健康診断の数値に現れた異常

――毎日その量を飲まれるなかで、生活やご自身のお体への不調は感じていましたか?

実は、自分のなかでは生活や仕事に直接的な影響は出ていないと感じていたんです。翌朝の目覚めも平気でしたし、二日酔いになることもほとんどなくなっていました。仕事に穴を開けることもなかったので、周りからは「お酒に強い人」と思われていましたし、自分でも「そこまで深刻な状態ではない」と目を背けていた部分があったと思います。

――それでも、客観的に「不調」と判断できる部分が出てきたのですね。

はい。毎年受けている健康診断で、肝機能の数値、特に「γ-GTP」だけが高い状態が続いていました。他の項目は正常値の範囲内だったのですが、「これはさすがにお酒を減らさないとまずいな」という気持ちが、徐々に強くなっていきました。

――そこから、どのように受診へと踏み切られたのでしょうか?

正直に言うと、当時は心の傷から「別に長生きしなくてもいいや」と思ってしまっている自分もいました。でも、「親や家族のために健康でいなきゃな」という思いもあり、さすがにお酒を飲みすぎているから、一度専門の病院に頼ろうと自発的に決めました。

自ら希望した「減酒」という目標と、主治医と二人三脚の治療方針

――専門外来の初診時や、その後の治療はどのように進んでいきましたか?

先生からは「一旦完全にお酒を断つ(断酒)ほうが治療としては早いよ」と提案されました。ですが、私はお酒を飲むこと自体が好きでしたし、「完全にやめるのは難しいです。お酒を減らすことからチャレンジさせてほしい」と正直な気持ちを伝えたんです。先生は私の意志を否定せず受け止めてくれて、「では、減酒を目標に一緒にがんばりましょう」と、私に寄り添った目標を立ててくれました。

――減酒治療では、どのようなアプローチを取られたのでしょうか?

先生との1対1の定期的な診察と、飲酒量を記録してコントロールしていました。毎日飲んだお酒の量や、その日にあった出来事を記録し、受診時に先生にその記録を見せて一緒に振り返るという方法です。飲んだ量が客観的に見える化されるため、「自分を冷静に振り返る」良いツールになり、一時はお酒の量を以前の半分(1日に缶チューハイを4本程度)にまで減らせるようになりました。

キャリアの中断と心身の不調。心細さのなかで、お酒に頼らざるを得なかった日々

――とても順調にコントロールできていたのですね。しかし、その後再びお酒の量が増えてしまう時期があったと伺いました。

はい。実は3年前くらいに、夫の仕事の都合で、長年住み慣れた土地を離れることになりました。これを機に、私は正社員として働いていた職場を辞め、パート勤務へと変更せざるを得ませんでした。「これまでのキャリアがなくなってしまった」という寂しさとストレスもあったと思います。さらに、家庭でのトラブルをきっかけにある日、心身のコントロールを失うほどの激しい不安に襲われるようになってしまったんです。

――それは非常に辛い状況ですね......。その大きな不安がお酒に影響したのでしょうか?

不安症状が出たとき、それを抑えられる手段がお酒しかなかったんです。発作を抑えるための薬は飲み続けることができず、当時はお酒を少しずつ飲んで発作をやり過ごすしかないと思っていました。そんな環境の変化や病気の苦しさから、一時期は1日の本数が再び10本と大きく増えていました。

自分に合わせた減酒の工夫と、踏み出す再スタート

――ご自身の力だけではどうにもならない、辛い波があったのですね。そうした厳しい状況のなかでも、少しでも身体の負担を減らすために、どのような工夫をされていたのでしょうか?

お酒の飲む量をゼロにすることは難しかったので、せめてアルコールの濃度を薄めようと考えました。缶チューハイをそのまま飲むのではなく、氷をたっぷり入れたり、炭酸水で薄めたりして飲むようにしました。私はお酒の酔い心地よりも「炭酸の喉越し」が好きなので、家に専用の炭酸水メーカーを導入して、炭酸水でお酒を何倍にも薄めて飲む対策を取っています。飲みたい衝動が来るとついお酒を手に取ってしまうなど、今でもまだ完全に克服できたわけではありませんが、この「薄めて飲む工夫」によって、体への過度な負担を和らげるようにしています。

――ご自身に合わせた工夫をされていることが素晴らしいです。そして最近になって、また生活に大きな変化があったそうですね。

そうなんです。実はつい数ヶ月ほど前に以前暮らしていた、馴染みのある場所へ戻ってくることができました。引っ越してきたばかりでまだバタバタしていますが、こちらに戻ってきたことを機に、以前お世話になっていた専門の病院を改めて受診する予定にしています。ここ数年は、生活環境が目まぐるしく変わるなかで、心身ともに少し慌ただしい時期が続き、お酒の量が増えてしまう波もありました。でも、「さすがに最近は飲みすぎているな」と思っているので、お酒との付き合い方をもう一度コントロールしていきたいと思っています。

一人で悩まずに、まずは病院に「話を聞きに行って」みてほしい

――最後にお酒の付き合い方に悩みながらも、受診に迷っている方へメッセージをお願いします。

お酒に対する悩みを一人で考え込まずに、まずは病院に相談してほしいなと思います。治療を始めて良かったと感じるのは、日々の飲酒量を記録することで、自分の飲酒をしっかり把握する習慣がついたことです。自分の飲んでいる量を冷静に自覚できるだけでも、コントロールへの大きな一歩になります。さらに、専門の先生が客観的な視点で定期的に状態を見守り、継続して寄り添ってくれる「つながり」があることは、何よりの大きな支えになります。自分の状態に合わせて、家族のサポートを借りるのも良いですし、私のように自分のペースで一歩ずつ進めるのも良いと思います。

 
  1. ※本記事は個人の体験談であり、治療の経過や効果、取り組みなどには個人差があります。
  2. ※記事内の医学的な内容については、監修医による確認を行っています。
  3. ※お酒との付き合い方や健康への影響にお悩みの方は、特定の症状だけで自己判断せず、必ず専門の医師による診察を受けてください。

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